top of page

映画「杜人(もりびと) ~環境再生医 矢野智徳の挑戦」

  • doullant
  • 2022年7月19日
  • 読了時間: 4分


日本に、ナウシカのような人がいます。

風の目線で草を刈り、大地の呼吸を蘇らせる。

人間の都合よりも、自然の声にひたすらに忠実に、手を動かす人が。




環境再生医、矢野智徳さんを追った映画『杜人』を観てきました。

矢野さんは、山梨を拠点に全国を飛び回り、土砂崩れなどの被災地から民家の庭まで、

「息苦しくなった大地」を再生させる造園家です。


どこまでも自然に倣う矢野さんは、

まっすぐな目が印象的な、男性版「ナウシカ」のよう。

言葉のひとつひとつに経験に伴った重みと確かさがあり、

矢野さんに工事を依頼した人達は、工事の計画や効率よりも、

その場にある命や自然のエネルギーの流れに全身で沿う矢野さんの力強さと、

適切な流れをつくることで、美しく息を吹き返す自然に心動かされます。





映画の中には、知らなかったことがたくさんありました。 コンクリートで土を固めたことにより「グライ土壌」という空気や水が循環しない有機ガスがこもる土の層でき、バクテリアから小動物、植物や木々などの生態系によくない影響をもたらしていること。 空気と水の通り道がなくなり、出口や循環が絶たれて土石流が起こること。 「大地の呼吸」。水も土も木も生きている。 人が呼吸を塞がれたら苦しいし、それは大地も同じ。 土石流は「大地の深呼吸」だと、矢野さんはおっしゃっていました。


興味深かったのは、大地や水、空気の流れなどの自然のエネルギーと、 わたしたちの身体のエネルギーの流れが似ているところ。 大地の中の水脈は太いものから細いものまであり、まるで動脈や毛細血管のよう。 点穴(てんあな)という空気と水の通りを良くする穴は、映画の中では関節に例えていました。(個人的にはリンパ管のような印象も。) 「コンクリートは敵ではない、ちゃんと通り道を作ってあげればいい」。 何かを敵視するわけではなく、「本来の流れ」を滞らせないようにする、 あとは自然の流れに沿って、それを信頼して、自然と回復していく。 まるで体のよう。というよりも、体が大地なんだと思います。 脈が流れ、たくさんの微生物と共存し、世界と一緒に循環している。




可能性のある命を無駄にしない姿勢。

矢野さんは枯れかかっている木も、普通は引っ越しさせない木も、

それが命を持って生きている限り、その期限を決めるのは、人のすることではないと言います。


「大変だけど、みんな最期まで生きる可能性の中で生き抜いている。生き抜くとは、息をしている限り、生を全うすること。」

「すごく重要なことを僕が学べたのは、人が絶対ということは絶対じゃないんだということ。」


水や空気の動きは渦になっていて、それは宇宙の渦流のエネルギーを受けているそう。

自然は、方法にこだわらない。

人が頭で考えるよりももっと柔軟に、自由自在にプラスの方向に向かっていく。

その確かな「よくなろう」とする流れは、宇宙の合理性なんだと思いました。



しなだれていた桜の木が、工事によって息を吹き返し、

見事に花を咲かせるシーンは、自然のたくましさと純粋さを感じます。




大地と体のつながりを、より一層感じさせられます。

身体も、大地も、なぜそれが起こっているのかを知り、どうすればいいかの道筋や方法が分かると、見方が全く変わってくる。

それには、知識・観察・体感が大切で、そこから道を拓いていくと、また新しい道につながっていく。本当に同じですね。


アーユルヴェーダでは、世界は火・土・水・風・空のエネルギーでできていると考えられています。

それらもまた、規則性や法則があり、人や自然に働きかけている。

というよりも、それらのエネルギーが元にあり、人や自然の物質や現象があるような気がします。


「杜人」は各地で上映中で、上映予定もあります。

大きい映画館というより、ミニシアターでの上映が多そうです。



身体は大地。大地は身体。

滞っているところを流せば、充足するようにできている。

自然の本来の流れに沿うことで、豊かな循環と学びがある。

そう改めて気づかされる映画でした。


 
 
 

Comments


©2020 by Harmonic Beauty。Wix.com で作成されました。

bottom of page